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神戸地方裁判所 昭和29年(行)5号 判決

西宮市屋敷町七〇番地

原告

増村幸平

同市羽衣町八七番地

原告

林万寿夫

同市分銅町二番地

原告

西田門

同市羽衣町八七番地

原告

木谷茂

同市羽衣町八七番地

原告

才目光人

同市産所町一

原告

赤峰フジエ

同市鳴尾町葭島五番地

原告

小田正

同市同町葭島八番地

原告

丹波谷友一

同市同町葭島五番地

原告

田中久信

同市今津曙町一〇五番地

原告

西真田剛

同市今在家町五〇番地

原告

村田義雄

西宮市羽衣町八七番地

原告

徳永その

同市同町八七番地

原告

西村甲

同市津門大箇町九〇番地

原告

野田新太郎

宝塚市小林字谷口五六番地

原告

橋本正

西宮市

被告

西宮税務署長

中西七三

右指定代理人

木村傑

松本修

佐藤正俊

藤原耕太

右当事者間の昭和二十九年(行)第五号所得税等更正決定取消請求事件につき、当裁判所は昭和三十一年五月十四日口頭弁論を終結して次の通り判決する。

主文

本件訴はいずれもこれを却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等は夫々被告が別表記載の日時に各原告に対してなした昭和二十七年度の所得金額並に所得税額更正決定はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求めその請求の原因として、

原告増村幸平は建具商、同林万寿夫は青物商、同西田門は果実商、同木谷茂は生魚商、同才目光人は青物商、同赤峰フジエは飲食業、同小田正、同丹波谷友一、同田中久信は執れも青果商、同西真田剛は牛乳販売業、同村田義雄は菓子商、同徳永そのは焼いも商、同西村甲は豆腐業、同野田新太郎は菓子商、同橋本正は製綿業を営んでいるものであるが、各原告の昭和二十七年度の所得金額並に所得税額は夫々別表甲欄記載の通りであつたので、その旨夫々被告に対し確定申告したところ、被告は夫々別表乙欄記載の日時に所得額並に所得税額につき、その記載のような更正決定をなした。そこで原告等は、いずれもこれを不服として被告に対し、夫々再調査の請求をしたが、被告は、いずれもこれを棄却した。原告等は、更にこれを不服として、夫々適法に訴外大阪国税局長に対し審査の請求をしたところ、同局長は原告増村、同丹波谷、同西真田、同村田に対しては別表丙欄記載のように一部訂正したのみにとどまり、その他の原告に対してはいずれも故なく請求を棄却した。しかしながら原告等の申告は正当にして、被告の前記各更正決定は違法であるからこれが各取消を求めるため本訴に及んだと述べ、被告の本案前の主張に対し、原告等が夫々審査決定通知書を送達を受けたことは認めるが、その送達の日時はこれを争う。即ち、原告増村は昭和二十八年十二月末頃に同村田は翌二十九年一月早々にこれが送達を受け原告林、同木谷、同才目、同田中、同徳永、同西村、同野田、同西田、同赤峰、同西真田、同橋本、同丹波谷の送達を受けた日時は不明であるが、原告西田は昭和二十八年十二月三十一日に、原告赤峰、同西真田、同橋本は翌年正月過に、原告丹波谷は同年一月七日に夫々右書面を発見し、原告小田は昭和二十八年十二月末に送達を受けたと思うが、同原告は翌年正月過になつて右書面を発見したもので、原告等の本件訴は、原告等自らが右書面を発見したときより三箇月以内になされたもので適法であると述べ、

更に原告丹波谷、同田中、同村田はいずれも原告等に対する審査決定配達証明書の存在のみによつては、同原告等が各配達証明書記載の送達日に自らの手で右決定書を受けた事を証するには足らないと附陳し、

原告増村は、乙第十九号証の各証の成立を認め、原告林は乙第一号証の各証の成立を認め、原告西田は乙第十八号証の各証の成立を認め、原告木谷は乙第十七号証の各証の成立を認め、原告才目は乙第五号証の各証の成立を認め、原告赤峰は乙第八号証の各証の成立を認め、原告小田は乙第九号証の各証の成立を認め、原告丹波谷は乙第十号証の各証の成立を認め、原告田中は乙第六号証の各証の成立を認め、原告西真田は乙第十四号証の各証の成立を認め、原告村田は乙第十五号証の各証の成立を認め、原告徳永は乙第四号証の各証の成立を認め、原告西村は乙第二号証の各証の成立を認め、原告野田は乙第十三号証の各証の成立を認め、原告橋本は乙第三号証の各証の成立を認めた。

被告指定人は、本案前の答弁として、主文同旨の判決を求めその理由として、原告等の本件訴はいずれも出訴期間を徒過してなされた不適法な訴である。即ち、本件更正決定の取消を求める訴は、所得税法第五十一条第二項の規定により、審査の決定に係る通知を受けた日から三箇月以内に、これを提起しなければならない。ところが、訴外大阪国税局長は各原告に対する昭和二十七年度分所得税審査決定通知書を書留郵便に付し、右通知書は、原告林に対しては昭和二十八年十一月二十九日に送達され、原告才目、同赤峰、同田中、同徳永、同西村、同橋本に対しては同年十二月十五日に送達され、原告小田に対しては、同年十二月二十四日に送達され、原告増村、同西田、同木谷、同丹波谷、同西真田、同村田、同野田に対しては、同年十二月二十七日に送達されているから、原告等は夫々右送達を受けた日から三箇月以内に本件訴を提起すべきものであるところ、原告等は右三ケ月を経過した昭和二十九年三月三十一日に本件訴を提起しているから、本件訴は不適法として却下さるべきである。なお、審査決定通知書が、名宛人たる原告等の住所において原告等本人又はその同居の者に送達せられたときは、名宛人自身がこれを受領したと否とを問わず、所得税法第五十一条第二項にいう審査の決定に係る通知を受けたものと解すべく又、右に送達とは審査決定通知書を被送達者が欲しさえすればそれほどの手数を要せずしてこれを手中に収め、且つ、その決定の内容を了知し得べき場所に到達すれば足りると解すべきであるから、右審査決定通知書の郵便到達の日を出訴期間計算の起算日とすべきものであると述べ、

本案の答弁として「原告等の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、原告等の主張事実中原告等が、その主張のような事業を営んでいる事、原告等が昭和二十七年度所得の申告に際し、その主張のような所得金額(但し、原告野田の申告所得額は金七八、〇〇〇円)並に所得税額(但し原告田中の申告所得税額は金二二、二六〇円原告橋本のそれは金一六、二五〇円)の確定申告をなしたこと、これに対し、被告がその主張のような所得金額(但し、原告野田の更正所得金額は金一五四、〇〇〇円)並に所得税額(但し、原告野田の更正所得税額は金八、八〇〇円原告橋本のそれは金四二、四〇〇円)の更正決定をなしたこと、これに対し原告等が再調査の請求をなしたのに対し、被告がこれを棄却したこと、原告等が大阪国税局長に対して審査の請求をなし、同局長が原告増村、同丹波谷、同西真田、同村田の審査請求に対しては、その主張のように請求の一部を認め、原処分の一部を取消し、原告林、同西田、同木谷、同才目、同赤峰、同小田、同田中、同徳永、同西村、同橋本の審査請求は、これを棄却したことはいずれも認めるがその余は争う。原告徳永は古本業、同西村はうどん業も併せ営んでおり、原告野田の審査請求に対し訴外局長はその所得金額を金一二四、四二〇円、所得税額を金二、八〇〇円と決定し、その請求の一部を認め、原処分の一部を取消しており、被告の本件各更正決定は原告増村、同林、同才目、同丹波谷、同田中、同村田、同徳永、同西村、同野田、同橋本に対しては、昭和二十八年三月三十一日に、その余の原告に対しては、同年五月二日になされ、訴外局長の審査決定は、原告林に対しては、同年十一月二十八日、原告才目、同赤峰、同田中、同徳永、同西村、同橋本に対しては同年十二月十四日、原告小田に対しては同年同月二十三日、原告増村、同西田、同木谷、同丹波谷、同西真田、同村田、同野田に対しては同年同月二十六日になされたものである。と述べ、

立証として、乙第一乃至第二十号証の各一の一、二、並に各二、三及び同第二十一号証の一乃至八を提出した。

理由

まず、本訴の適否について考えると所得税法第五十一条第二項によれば、再調査の請求若しくは審査の請求の目的となる更正決定の取消を求める訴は、審査の決定に係る通知を受けた日から三箇月以内にこれを提起しなければならない。そして原告が本件更正決定に関し被告に再調査の請求をしたところ、被告がこれを棄却したので、原告等が更に訴外大阪国税局長に審査の請求をしたところ、同局長がこれに対し決定をなし、原告等の住所にその決定の通知書が送達されたことは、被告の明かに争わないところであるから、これを自白したものと看做す。右審査決定の送達の日時については、当事者間に争のあるところであるが成立に争のない乙第一乃至第六号証、同第八、九号証、第十二乃至第十五号証、同第十七乃至第十九号証の各一の一、二並に各二、三によれば、右審査決定通知書がいずれも書留郵便を以て、原告林の住所に昭和二十八年十一月二十九日に、原告才目、同赤峰、同田中、同徳永、同西村、同橋本の住所に同年十二月十五日に、原告小田の住所に同年同月二十四日に、原告増村、同西田、同木谷、同丹波谷、同村田、同野田の住所に同年同月二十七日に、同西真田の住所に同月二十八日に配達されたことを認めることができる、そして審査決定通知書が書留郵便に付せられて名宛人たる原告等の住所に配達せられたるときは、社会観念上現実に了知しうべき客観的状態を生じたというべきであるから名宛人自身がたとい一身上の都合で偶々これを了知しなかつたとしても、所得税法第五十一条第二項に謂う審査の決定に係る通知を受けたものと解するのを相当とするから、原告等は夫々前記日時に前示審査の決定に係る通知を受けたものと謂わねばならない。したがつて、原告は夫々右日時より三箇月以内に本件訴を提起すべきものであるところ、原告等が右三箇月を徒過した昭和二十九年三月三十一日に本訴を提起したことは記録上明白である。

すると原告等の本件訴は出訴期間徒過後の不適法のものと謂うの外はない。

よつて、原告等の本件訴の爾余の点について判断するまでもなく不適法として、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項本文を適用し主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 山内敏彦 裁判官 尾鼻輝次 裁判官 三好徳郎)

〈省略〉

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